尖閣の波高し〜出稼ぎ社長、千里を走る!! 〜
「えっ、本当に研修やるの? 中止の要請は来ないの?」
中国人エンジニア向けの講習会が、中国内陸部、とある工場で予定されていたのだが、時は9月中旬、尖閣で大荒れの日中関係まっただ中。
焼打ちされる販売店、略奪される百貨店、炎と黒煙の映像が、連日テレビに流れていた。
7年前、小泉首相、靖国参拝に端を発した日本大使館(北京)・領事館(上海)への投石デモの時、展示会出展で北京に滞在していた。
日本での報道とは裏腹に、デモは限定的でビジネスの現場では、まったくと言っていいほど影響がなかったが、天安門に日本人観光客の姿は無く、予定していた日本からの取引先、訪中はすべて中止となった。
デモ隊の投石で、ボコボコになった大使館の映像を見て、
「社長、生きていますか?」という日本からの電話に、
「大丈夫だから北京に来いよ!」とは、さすがに言えなかった。
北京の夜、こっそり飲みに行くと、いつも日本人駐在員でにぎわうクラブもガラガラ。
親日の中国人ママのグチを聞きながら、残存者利益で、可愛い女の子を独り占めしてカラオケを楽しんだ思い出がある(笑
ただ、危機管理では経験が仇になることも多い。
「自分だけは大丈夫!」
「昔の似たような危機を乗りきったから、、、」はあてにならない。
起きる危機ごとに、常に情報を収集し、ゼロベースで対応を考えなければいけない!
と心がけているのだが。今回は…
結局、講習会中止の要請は無く、決定的なマイナス情報もなく、訪中することにした。
正直を言えば現地に行かなければわからない、日本での報道では、決っしてわからない現地の空気を感じてみたい、耐え難い誘惑もあった。
▲ガラガラの羽田空港
飛行機も空港も日本料理店も、ガラガラ。中国人にまぎれこめ!?
今回は空港からホテル、ホテルから工場、チャーター車を社員が運転し、外には出ないということで出発したのが9月19日。
飛行機の座席に座って見回すと、さすが、この時期に出張に行こうという人は、それなりの覚悟をもって渡航する事情通。
ビシッと背広を着ている人達は、見るところ一組だけ。
この時ばかりは、一目で海外出張シロートさん、平和ボケに見える(笑
事情通は、みんな、ポロシャツ、チノパン、ジーンズ カジュアルないでたちで、リラックス 「日本人ビジネスマンもやるなー」と。
▲虹橋空港に展示の「レクサス」もお隠れに
僕も Made in JAPAN を誇りに、中国出張では、あえて背広を着ていくのだが、今回ばかりは、ポロシャツにジーンズ、説明会は作業服。
ひたすら中国人にまぎれこむことにした。
中国に着いてみると、現地のTVは連日、東京特派員が、愛国心丸出しで日本政府の対応を非難している。
前回は多くの中国人にとって、小泉が誰か?靖国が何か?わかっている人はほとんどいなかったが、今回は領土問題、魚が釣れる島だけに、一般大衆にわかりやすく、テロを招きやすい。
そこで、安全を考え、五つ星ホテルを選んだのだが、部下の一人が、ロビーで日本に携帯電話で話をしているのを聞いた、従業員の一人が、出発を待つ私達に「あの人達は、日本人よ!」と言いふらし、複数の人間の好奇の視線にさらされたことがあった。
これが、夜のローカルの酒場だったら、と思うと、けっこう肝を冷やす。
幸い、工場で100人近い中国人エンジニアを前にした、日本語、同時通訳、技術講習会は好評のうちに無事終了。
日本人を揶揄する空気は全く感じられなかった。
が、しかし、帰国後、私達が訪問をした工場で、警備員と従業員のいさかいがキッカケで、講習会の翌日、暴動が起きたことを知った。
急激に発展する中国では、近代と前近代が同時に進行している。 そのはざまで働く人たちのストレスは大きい。
ちょっとしたことで、中国人同士、街中で怒鳴りあいや、取っ組み合いのケンカを見ることもしばしばだ。
愛国無罪の名のもとに、日本との領土問題が、さまざまなストレスのはけ口に、ならなければいいのだが。
事態の鎮静化を祈るばかりだ。
7年前のデモで破壊された、上海の有名な「お好み焼き屋さん」もお隠れに。
今回は無事で良かった!
上海の日本領事館の前の通りは完全封鎖
「俺の家に帰れないじゃないか!ヽ(`Д´)ノ」