クーラントとは?種類や特徴についてわかりやすく解説

出典:はじめての工作機械

Point

✅ クーラントの主な役割は潤滑、冷却、切りくずの運搬の3つ
✅ 原液のまま使う不水溶性切削油剤と水で希釈する水溶性切削油剤
✅ チラーでクーラントの液温を一定に保つ

クーラントとは

クーラントは、切削加工や研削加工を円滑に進めるために、加工点に供給する切削油剤のことを指す。

クーラントには大きく
①潤滑作用
② 冷却作用
③ 切りくずの運搬作用
の3つの役割がある。

潤滑作用とは、切削工具とワーク (加工物)との間で発生する摩擦を抑える働きだ。工具の摩耗を抑制し、長寿命を実現する。

冷却作用は 、加工時の熱を冷やす働き 。一般的に切削加工時の加工点の温度は 600度〜 1000 度にも上るといわれる。熱の影響で工具の硬度が低下するだけではなく、ワークも熱膨張を起こして寸法精度に悪影響を与える。そのため、クーラントで熱源 を冷却することが重要だ。冷却が主要な役割の一つであることから、クーラントという呼び名が現場では広く使わ れる。

切削加工時のクーラント供給
切削加工時のクーラント供給

切りくずの運搬作用は、切削加工で発生した切りくずを水圧で飛ばし、加工点から取り除く働きを指す。

この他、クーラントには溶着を抑える働きもある。溶着とは、ワークの材 料の一 部が 熱で溶けて工 具に付 着する現象を指す。この付着物が疑似的な刃先として機能する状態を「 構成刃先」と呼ぶが、構成刃先の状態で加工すると、ワークと同じ材質の付着物をワークに直接押し付けることになり、 良好な切削ができない。クーラントが工具とワークの間を流れることで、溶着や構成刃先の発生を抑え、 加工精度の安定化も実現する。

クーラントの供給方法は、ホースで工具の外側から加工点に向けて供給する「外部給油方式」と、工具の内部にクーラントを通して供給する「内部給油方式」の2種類がある。

クーラントの種類

クーラントには、①不水溶性切削油剤 ②水溶性切削油剤 の2つのタイプがある。
不水溶性切削油剤は原液のままで使い 、 水溶性切削油剤は水で希釈して使う。

1 .不水溶性切削油剤

日本産業規格 (JS)では、 成分や銅板への腐食性から不水溶性切削油剤をN1種 〜 N4種の4種類に分けている。
N1種は銅などの非鉄金属や鋳鉄の加工に力を発揮する。N2種は一般的な切削加工に広く使われる。N3種とN4種は難削材の 加工や仕上げ面の精度が厳しく要求される加工に向く。

不水溶性切削油剤は水溶性切削油剤に比べ、劣化が少なく管理がしやすいのが特徴だ。しかし、消防法で定める危険物に該当するものが多く、火災の予防措置を取るなど扱いには注意が必要だ。

不水溶性切削油剤
不水溶性切削油剤 (画像出典:はじめの工作機械)

2 .水溶性切削油剤

水溶性切削油剤は通常、2〜10%の濃度に薄めて使う。不水溶性切削油剤と違い、引火の危険性が少なく、無人加工にも向く。しかし、水で薄めて使う以上、適切な濃度の維持や管理、さび防止の対策、廃液の処理に注意が必要だ。

水で薄めた時の水溶性切削油剤の成分と外観色に基づき、JISではA1種 ~ A3種の3種類を規定している。A1種は「エマルジョン」、A2 種は「ソリューブル」、A3種は「ソリューション」とも呼ばれる。

エマルジョンは水で希釈すると乳白色になる。切削加工全般に使われる。 水溶性切削油剤の中では最も潤滑性が高い。

水溶性切削油剤
水溶性切削油剤

ソリューブルは希釈した時の外観色が半透明または透明の切削油剤 。 エマルジョンに比べ、冷却性や洗浄性に優れる。主に切削加工や研削加工で使われる。ソリューションは水で薄めると透明になる。 水溶性切削油剤の中で最も冷却性が高いのが特徴だ。

ドライとセミドライ

良質な切削加工をするにはクーラントが欠かせない。しかし、加工中にクーラントの微粒子がオイルミストとなって飛散するなど、作業環境に悪影響を与える側面もある。また、廃液をどう処理するかも問題だ。クーラントを循環させるポンプの消費電力量も大きく、省エネの課題もある。

製造現場の省エネや地球環境への意識の高まりから、最近はクーラントを少量しか使わない、または全く使わない環境に優し い加工法が注目されている。クーラントを全く使わない加工法を「ドライ加工」と言い、クーラントをごく少量しか使わない加工法を「セミドライ加工」と呼ぶ。セミドライ加工は「MQL加工」とも言われる。 MQLは「 Minimum Quantity Lubrication (極小量潤滑)」の頭文字を取ったものだ。

チラー

チラーとは、 液体の温度を一定に保 つ装置だ。クーラント用のチラーは「油冷却機器」「油温自動調整機」 「クーラントチラー」などとも呼ばれる。

クーラントポンプの熱の影響で、クーラントの液温は変化する場合が ある。液温の変化は、加工精度だけではなく工具や砥石(といし)の寿命にも影響を与える。そのため、液温は一定であることが望ましい。

また、液温が上昇するとクーラントは腐敗し、バクテリアなどの細菌が繁殖する。悪臭の原因になるため、作業環境の改善のためにも、チラーでクー ラントの液温を冷却して一定に保ち、 腐敗やバクテリアの発生を抑えることも重要だ。

クーラント用チラー
クーラント用チラー (画像出典:はじめの工作機械)

クーラント用のチラーは機構に応じて、大きく「浸漬(しんせき)式」と「循環式」の2種類がある。
浸漬式は、コイル状の冷却器がむき出しになっており、クーラントタンクに直接浸すだけですぐに使える。だが、冷却器の深さによっては、浅いクーラ ントタンクには冷却器を直接浸せず、 外 付けの深いタンクを別途用意する必要がある。

一方、循環式は、冷却器やクーラン トを吸引するためのポンプを装置に内蔵している。冷却器の深さに関係なく、どのクーラントタンクにも対応できるのが特徴だ。

チラーは従来、外気を利用して機械の熱を外に排出する「空冷式」が主流だった。だが、環境意識の高まりと共に、最近は冷却水で排熱を除去してエ場建屋内への排熱レスや省エネを実現する「水冷式」の需要も増えている。

出典:はじめての工作機械

センサ導入事例

大手自動車メーカー向けに、ステアリング部品を製造している自動車部品メーカー様です。

生産技術のご担当者様より、タッピングセンタ内の悪環境下での、治具とワークの「着座確認」について、ご相談頂きました。

クーラントが飛び散る切削加工

加工テーブルXY軸のズレを、0.5μm繰返し精度で検出

自動車メーカー向けにエンジン部品を製造している、自動車部品メーカー様です。


切削加工の生産技術ご担当者様より、タッピングセンタの加工テーブルの「位置決め」について、ご相談いただきました。

エンジン製造加工風景

【動画】

クーラント耐久試験 タッチプローブK3Sシリーズ

関連記事

【品質への取り組み】IP67 防水構造へのこだわり

メトロールの「精密位置決めスイッチ」の特長のひとつが、高い防水性です。


高精度だが簡単に壊れてしまう…のではなく、切粉やクーラントの飛び散る悪環境でも高い精度を発揮できる「防水構造」を、長年に渡り追求しています。

IP67防水構造へのこだわり

お問い合わせ