【導入事例】3Dプリンタの造形精度が10倍アップ!タッチスイッチ導入事例

3Dプリンタへのタッチスイッチ導入事例

なぜ3Dプリンタの造形不良は起きるのか?

3Dプリンタの需要が高まっています。
製造業ではプロトタイプ作成、カスタム部品製造など従来の製造方法では難しかった複雑なデザインの製品も作成可能となりました。その他、医療、建設、宇宙航空、教育、食品、ファッションなど様々な業界で3Dプリンタが使用されるようになり、3Dプリンタの需要は今後も増え続けると予想されます。

一方、3Dプリンタでの制作に従事されている皆様は、以下のように悩みはありませんか?

  • 「精度が悪く造形の失敗が多数でてしまう…」
  • 「製作時間がムダになり期日にも間に合わなかった…」

今回は3Dプリンタにタッチスイッチを搭載することで高精度な造形を実現し

  • 造形精度 10倍UP
  • 造形時間 1層目失敗率9割減
  • 再現性   10倍UP

を実現したユーザー様をご紹介します。ぜひご覧ください。

この記事でわかること

  • 3Dプリンタで造形不良ができる理由
  • 造形不良を改善するタッチスイッチの使い方
  • 設計者に役立つスイッチの使い方

取材先のご紹介:3Dプリンタメーカー名古屋工芸様

取材にご協力頂いたのは愛知県名古屋市の(有)名古屋工芸様。(以下、敬称略)
3Dプリンタの製造、3Dプリンタを利用した工業製品・コンシュマー製品の小ロット生産事業を展開しています。

「市場の3Dプリンタに課題が多いなら、自分たちで理想の3Dプリンタを作ろう」と、2023年に開発を開始。
主力製品「3DプリンタSenju」はノズルの自動ツールチェンジャーを搭載した国内初の業務用3Dプリンタを発売し今注目を浴びている企業です。

名古屋工芸  岡田佳記 AM事業部長
(有)名古屋工芸 岡田佳記 AM事業部長
名古屋工芸  脇本智正 技術責任者
脇本智正 技術責任者 
3DプリンタSenju
▲ 国内初の業務用3DプリンタSenju

3DプリンタSenju 自動ツールチェンジ機能
▲ ノズルを自動で変更する自動ツールチェンジ機能を搭載

名古屋工芸が考える3Dプリンタの課題

名古屋工芸が3Dプリンタの開発で取り組んだ最重要課題について解説します。

課題:造形失敗の9割は「1層目の造形不良」

一般的な3Dプリンタは造形不良が多く発生しており、その原因の9割は 「造形テーブルの歪みによる1層目の不良」であると名古屋工芸では考えていました。

原因:補正できない造形テーブルの歪み

1層目で不良が発生する背景には主に、
・熱膨張
・テーブル上の傷、汚れ、曲がり
・ガイドの精度

といったテーブル関連の悪影響が挙げられます。
こうしたテーブルの歪みは通常「近接センサ」を使用して検出しますが、測定精度が足りず1層目の失敗を回避できていないケースが多発していました。

3Dプリンタ 1層目失敗例
▲ 1層目失敗例:テーブル高さの測定が正確ではない為、塗りつぶしの線に隙間がある
3Dプリンタの課題

3Dプリンタの精度を劇的に高めた方法とは?

名古屋工芸は造形精度の要である造形テーブルの歪みを極限まで正確に計測し、補正する方法を開発しました。

解決策:近接センサの代わりに高精度タッチスイッチを採用

解決策として、精度の足りない近接センサの代わりに「高精度な接触式のタッチスイッチ」を採用。
これまで近接センサでは検出できなかった造形テーブルの歪みを接触式で高精度に計測することで、1層目の造形失敗の原因となるテーブルの歪みを補正することに成功しました。

3Dプリンタ タッチスイッチ搭載写真
▲ 造形テーブルの歪みを接触式のタッチスイッチで高精度に計測

タッチスイッチを活用した歪みの補正方法

タッチスイッチを利用した造形テーブルの歪みを補正するプロセスは以下の通りです。

1 . タッチスイッチでテーブルの複数個所の座標を計測
2 . コントローラーに測定データ送信

3.測定データをもとにテーブルの歪みを把握
4 . 測定後 、自動ツールチェンジでノズルとスイッチを交換しテーブルの高さを補正しながら造形開始


動画解説】タッチスイッチを使った造形テーブルの計測方法

実際にタッチスイッチを使って造形テーブルの高さを計測する方法を以下の動画でご覧ください。
テーブル上の複数点をタッチスイッチで検出することでテーブル面全体の歪みを把握することが可能になります。

▲ タッチスイッチによる造形テーブル計測

【写真】造形テーブルの歪みを計測したファームウェア画面

タッチスイッチで計測した造形テーブルの歪みは以下のようにハイトマップで表されます。
この歪みを補正しながら1層目を造形することで「1層目の造形失敗」を防ぐことが可能になりました。

3Dプリンタ造形テーブルの歪みを計測
▲タッチスイッチで計測した造形テーブルの歪みをハイトマップで可視化

3Dプリンタにタッチスイッチを選んだ3つの理由

センサ選定に当たっては類似製品も候補にはあったがメトロール製品を迷わず選択。 
その理由は3点。
①国内・海外で圧倒的な採用実績があり安心できるブランド力がある
②高額なレーザーセンサーなどと比べ費用対効果が大きいこと
③日本製であるためアフターフォロー等も含め安心できること

3Dプリンタに採用したタッチスイッチ特徴

タッチスイッチを搭載した3DプリンタSenjuの成果は?

 タッチセンサ利用で従来使用される近接センサと比較して以下の効果が生まれました。

成果:造形テーブルの歪みを10倍の精度で計測可能に(50μm→5um)

一般的に、3Dプリンタ市場でセンサーは0.05mm(50μm)と仕様に記載されていますが、名古屋工芸の「Senju」はその10倍の精度で計測が可能になりました。その繰り返し計測によって正確な造形を実現することができました。

3Dプリンタの保証精度の比較

造形物の品質が大きく向上

造形テーブル(造形台)とノズル距離を極限まで正確な数値でコントロールすることで高精度な造形が可能になりました。
Senjuにはノズルを自動で変更する自動ツールチェンジ機能を搭載。
最大のメリットはノズル径を自由に変え、造形の再現幅や大型造形の高速化などの選択肢を増やすことができるのです。

3Dプリンタ 中型ドローンフレーム例1
▲ 中型ドローンのフレーム(サポート材が付いた状態)
3Dプリンタ 中型ドローンフレーム例2
▲ 中型ドローンのフレーム
3Dプリンタ 装置部品
▲ 装置部品
3Dプリンタ 人型、可動ロボットハンド
▲ 人型、可動ロボットハンド
▲ノズルチェンジによる積層高さ可変造形テスト

1層目の造形失敗率は大幅減少!3Dプリンタの稼働率、生産性が向上

タッチスイッチの活用で結果として以下のような効果が生まれました。

  • 1層目の失敗率は大幅に減少
  • 従来では500万円以上の高額なプリンタでしか出来なかった350mm2を超える大型造形をタッチスイッチを活用し、低コストかつ高精度を実現。約半額レベルまでコストダウン
  • やり直し時に10-20分程手間のかかる造形テーブルの掃除や装置の再昇温など、段取り作業の回数が極端に減少し素早く造形可能に
  • 属人的になりがちで、週に1度は行っていたノズルとテーブルの高さ調整も半年に1度の調整になり安定した造形物の作成が可能に

3Dプリンタメーカー名古屋工芸のビジョン

試作品を作る3Dプリンタではなく量産できる工作機械をつくりたい

Q. 今後どのような3Dプリンタの開発を目指しているのかビジョンがあれば教えてください。

名古屋工芸 岡田AM事業部長 脇本技術責任者
▲ (左)岡田 AM事業部長 、(右) 脇本 技術責任者 

(有)名古屋工芸 脇本技術責任者:
業界も製造業だけでなく食品、医療、農業、サービス業など様々なニーズに対応できるツールを搭載し実現できる夢の工作機械を作りたいと思ってます。そんな思いが千の手を持つ「千手(Senju)」に 込められたコンセプトです。
お陰様で今ではびっくりするくらいの大企業からも声がかかり、大人数でご来社頂くこともあり工場に全員入りきらないという時も(笑)。世の中3Dプリンタに対する関心の強さをヒシヒシと感じてます。

日本製3Dプリンタで技術大国、日本復権に貢献してゆきたい

(有)名古屋工芸 岡田AM事業部長:
市場を見れば3Dプリンタは海外製品がほとんど。
サポート含め安心して利用できる日系メーカー装置は数少ないのが現状です。
弊社はそんな現状に対して真っ向勝負を挑みたいという思いで開発を始めました。
日本のクリエイティブ産業の後押しができるような装置、信頼して任せておける日本製の3Dプリンタが存在すれば日本のモノづくりは今以上の独創性や高度な技術を保持し続けられる。
そんな日本の製造業に貢献したいと目標を掲げ、今後も更に高性能化、高品質化に邁進してまいります 。

名古屋工芸様の益々のご発展に、メトロールのセンサでお役に立てれば幸いです。ありがとうございました。

取材協力:(有)名古屋工芸

名古屋工芸会社概要画像

本事例でご紹介した製品はコチラ

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